日本の軽EVを欧州導入?EUが検討する「E-car」カテゴリー…海外報道

12月9日付の日経が「EU、小型EV独自規格」とのタイトルで、「欧州連合(EU)が自動車分類に『小型EV(電気自動車)』枠を新設する」などと報じた。欧州での報道を見ると、EV普及の進捗、小型車市場の停滞、中国メーカーへの対抗など、複数の要因があるようだ。

◆1万5000~2万ユーロの電気ハッチバック

EUNews』は、記事「欧州製電気自動車、セジュルネ氏が価格を1万5000~2万ユーロに設定。ウルソ氏『電気自動車だけにすべきではない』」(9月29日付)で、EUが「欧州で生産された手頃な価格のEVを普及させる」ために、新カテゴリー「E-car」を設定する見込みを伝えている。

欧州製小型電気自動車に関するEUのイニシアチブは、内燃機関の廃止に関する規制の見直しに連動するもの。価格は「1万5000~2万ユーロの電気ハッチバック」。欧州委員会のステファン・セジュルネ産業担当執行副委員長は9月29日、この計画を確認した。ただしイタリアの企業・メイド・イン・イタリー担当大臣アドルフォ・ウルソ氏は「電気自動車だけに限定されるべきではない」と付言している。

◆小型・手頃な価格の車

S&P Global Mobility』の記事「新たなEU規制が欧州自動車市場を復活させるか?」(10月16日付)では、現行の自動車で最小となるAセグメントの販売低迷を背景に、EUの“small affordable cars”=小型・手頃な価格の車への回帰が「E-Car」の構想とされている。

「欧州委員会は現在、よりシンプルで低コストな車の復活をめざす政策を検討中だ」。今般のEUの動きは、9月上旬に、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が、小型・低コスト車への注力を表明したことが発端。委員長が「小型で手頃な価格の車」イニシアチブを推進中であると発表したのだ。

この新カテゴリーは「E-cars」と呼ばれ、親環境(environmental:クリーン・効率的・軽量)、経済的(economical :低コスト)、欧州製(European:欧州のサプライチェーンを活用した域内組立)が特徴だ。

◆安全装置の簡略化

Reuters』の記事「EUは小型EVの価格引き下げに向け、12月に新カテゴリー創設を発表する計画、セジュルネ委員が明らかに」(11月4日付)によると、新カテゴリーの発表はもうすぐだ。

記事では新カテゴリー創設の目的を「中国との競争に対抗し欧州市場を活性化するため」としており、「複数の自動車メーカーが規制変更を推進している」と言う。記事では新カテゴリーは「車重が数百kg、四輪自転車と普通の自動車との間」とし、利点を「大型セダン車と同等の安全装備や技術を搭載する必要がなくなる」としている。

◆中国メーカーへの対抗策

12月9日付の『Automotive World』の記事「EU、中国競合車に対抗する小型EVクラスを創設」も、新カテゴリーは中国メーカーの低価格EVへの対抗策としており、新規格についてそれまでの報道より、やや詳しく述べている。

「車両のサイズ・重量・モーター出力で定義し、10~20%のコスト削減を実現」。また新カテゴリーでは、都市部向けコンパクトモデルについて各種安全装置を免除するという。さらに「対象車両の免税措置について協議する」そうだ。

中国系自動車メーカーの動向についても、シュミット・オートモーティブ・リサーチのデータを用いて、「欧州市場での存在感を高めて」いると説明、EVのシェア拡大は「BYDが先頭に立っている」と報じている。さらに中国系メーカーがEU域内に工場を展開、「欧州製」自動車を生産しているそうだ。

◆Aセグメントモデルの例

E-carの想定される販売価格は1万5000~2万ユーロで、日本円では270万~360万円となり、安価とは言いがたい。日本市場の軽EVの価格は日産『サクラ』が約260万円から、ホンダ『N-ONE e:』が約270万円からで、これらに行政の補助金が適用される。新カテゴリーは日本の軽EVのエントリーレベルていどの価格になるわけだ。

現地、欧州Aセグメントでは、フィアットの『パンダ』(マイルドHV)が1万5500ユーロからという例がある。A-Bセグメントの境界付近に位置するのがヒョンデ『i10』で、約1万9000ユーロから。トヨタの『アイゴX』(ハイブリッド)の価格は『アイゴ』からのモデルチェンジでやや上級に移行し、約2万ユーロからとなった。

寸法や快適装備がAセグメント相当でもフル電動になると価格は上昇し、ルノー『トゥインゴ E-Tech』(EV)が約2万5000ユーロから、ルノー傘下で大衆車ブランドのダチア『スプリング』(EV)が約1万7000ユーロからだ。フォルクスワーゲンが2027年に発売予定の『ID.1』(EV)は2万ユーロを切る価格が目標と伝わる。

このように新カテゴリーは、寸法は現行Aセグメントより小さく、構造もシンプル、動力はフル電動で、価格は内燃機関搭載の現行Aセグメント並みとなり、日本の軽EVに似通った規格になる。

欧州市場Aセグメントで、現在のところ中国系メーカーの製品はない。中国本土で普及している小型EVは、そのままではEUの安全基準などが適合せず、導入しにくい。E-carの“対中国”という使命は予防的なものと考えられる。

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