新型ハイエースは2つのボディタイプを設定して予想価格は270万円〜! 4ナンバーサイズはどうなる?

日本の物流を支えるトヨタ ハイエースの次期型のベースになると思われるコンセプトモデルが、ジャパンモビリティショー2025で公開されました。最大の注目点は、衝突安全基準に対応するための「ボンネット」の装着です。 しかし、ボンネット化は「4ナンバーサイズ維持」か「現行並みの荷室の広さ」か、という究極の選択を迫るもの。現場のニーズに応えるため、新型ハイエースは一体どのような姿で登場するのでしょうか? この記事では、カーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが、新型ハイエースに予想される2つのボディサイズと、それに伴う予想価格について、その背景とともに解説します。

トヨタ ハイエースコンセプト ジャパンモビリティショー2025

ジャパンモビリティショー2025に「新型ハイエース」のヒント登場

街中で頻繁に見かけるトヨタ ハイエース。商用車として日本の物流を支える重要なモデルですが、その次期型に関するヒントが「ジャパンモビリティショー2025」で示されました。

トヨタ ハイエースコンセプト

参考出品された「ハイエースコンセプト」は、現行ハイエースとは大きく異なる短いボンネットを持つミニバン風のスタイルでした。これは、ボディサイズや構造が大きく変わることを示しています。

新型ハイエースのボディサイズはどうなる? 予想される2つのラインナップ

現行ハイエースの使い勝手と、新たな法規対応を両立させるため、新型ハイエースは少なくとも2種類のボディと駆動系が用意されると予想されます。

ボディタイプ1:標準(前輪駆動ベース・4ナンバーサイズ維持)

ハイエースコンセプト(標準)

ボディが最も短い新型ハイエースは、全長が4695mm、全幅は1695mmの4ナンバーサイズを守るとみられます。

ただし、ボンネットが加わる分だけ荷室長は650mm前後は短くなり、2350mmくらいに留まります。 駆動方式は前輪駆動とこれをベースにした4WDで、ハイエースコンセプトの標準サイズが市販化した場合に近い仕様でしょう。

ハイエースコンセプトは助手席がなく、ピラーが内蔵されたスライドドアを採用

軽商用車のホンダ N-VANのシートアレンジを連想させるような、助手席や後席を装着しない1人乗り仕様も設定され、床の低さやピラー(柱)をスライドドアに内蔵させた構造により、荷物の収納性も優れていると予想されます。

参考:ホンダ N-VAN, 参考:ホンダ N-VANのシートアレンジ

参考:ホンダ N-VAN, 参考:ホンダ N-VANのシートアレンジ

ボディタイプ2:ロング版(後輪駆動ベース・1ナンバー仕様)

ハイエースコンセプト(ロング版)

一方、荷室長が従来と同じ3000mmのタイプも存続すると予想されます。こちらはボンネットが加わる分だけ全長も5400mm近くまで伸びます。

その代わり現行ハイエースと同様に荷室が広く、後輪駆動で大量に荷物を積んでいる時の坂道発進もしやすいという、従来のハイエースの強みを受け継ぐモデルとなるでしょう。

このほか現行ハイエースには、全幅が1880mmの「ワイドボディ」、全長が5380mmで全幅が1880mmの「スーパーロングボディ」もあります。

これらもボンネットを装着して、全長を650mmほど拡大して存続するでしょう。新型ハイエースでは全長が6mを超える仕様も出てくることになります。

新型ハイエースの予想価格は270万円〜!

新型ハイエースのボディタイプ別に価格を予想しましょう。

標準(前輪駆動/4ナンバー)の予想価格:270万円〜

新型ハイエースの最も安価な4ナンバーサイズに収まる前輪駆動の仕様は、ピラー内蔵型スライドドアなどを装着して、2.0Lのガソリンエンジンを搭載するベーシックグレードが270万円くらいでしょう。

現行ハイエースで最も安価なグレードが250万円少々なので、新型では20万円ほど値上げされると予想します。

ロング版(後輪駆動/荷室長3000mm)の予想価格:300万円〜

新型ハイエースの荷室長が3000mmに達するタイプは、2.0Lガソリンエンジンを搭載したベーシックなグレードでも、300万円近くになるでしょう。

ボンネット装着の理由は? 「衝突安全基準」への対応

なぜ新型ハイエースは、このようにボディサイズや駆動方式の根本的な見直しを迫られているのでしょうか。それには法規への対応が挙げられます。

理想的なボディ形状の現行ハイエース

現行ハイエースバンのフロントビュー

まず、現行ハイエースについて振り返りましょう。

現行ハイエースは典型的な「ワンボックス」形状で、コンセプトモデルのようなボンネットはありません。

標準的なハイエースロングバンのボディサイズは、全長が4695mm、全幅は1695mm、全高は1980mmです。乗用車の5ナンバーサイズに相当する4ナンバー車となります。

ワンボックス形状なので、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2570mmと短く、最小回転半径も5.0mで小回りの利きも良好です。

このように、乗用車の5ナンバーサイズに相当する運転しやすいサイズで、荷物を大量に積めるため、商用車では理想的なボディ形状とされています。

現行ハイエースは衝突安全基準に難あり

現行ハイエースの標準的なロングバンは、4695mmの全長で、荷室長が最も長い仕様になると3000mmに達します。

つまり荷室長を除いた1695mmに、衝突時の衝撃を吸収する部分、ヘッドランプなどが収まるフロントマスク、インパネ、シート、ボディ後部のリアゲートなどを凝縮して詰め込んでいます。

現行ハイエースバンのサイドビュー

前席が前輪の上に位置しており、フロントウィンドウやインパネは、ボディの先端部分に装着されています。これにより室内を広く確保する上では優れた効果を発揮します。全長に占める居住空間や荷室を可能な限り長く、大きく確保できるからです。

しかし、このボンネットのないボディ形状では、前面衝突した時に、乗員を守るために衝撃を吸収できる部分が少ないです。衝突安全性では不利となります。

ハイエースコンセプトの開発者は「2030年頃には衝突安全基準が厳しくなり、現行ハイエースのようなワンボックスバンでは、クリアできない可能性が高いです」と言います。

ボンネットのあるハイエースに進化が必要

一方で、ハイエースコンセプトの外観は、現行ハイエースとは大きく異なります。

それは、衝突安全性の向上のため、前面衝突時に衝撃を効果的に吸収するゾーンを追加しているためです。

ハイエースコンセプトのサイドビュー

短いボンネットが装着され、外観を横方向から見ると、トヨタ アルファードのようなミニバン風のボディ形状となっています。

ボンネット装着でも全長は維持される理由

ボディ形状は変わりますが、全長は維持される見込みです。

しかし、現行ハイエースロングと同じ全長4695mmのボディにボンネットを装着しようとすると、荷室長3000mmを確保することはできません。

この計算の根拠として、すでにボンネットを備えている「ハイエースの海外仕様」が参考になります。この海外仕様は、全長が5265mmと長いにもかかわらず、荷室長は2910mmに留まります。 つまり、海外仕様はボンネットや運転席まわりに「全長−荷室長=2355mm」ものスペースを割いているのです。

一方、日本の現行ハイエース(ワンボックス)が同じ計算をすると、「全長4695mm−荷室長3000mm=1695mm」です。 この差(2355mmと1695mm)こそがボンネットの有無による違いであり、ボンネット化によって新たに追加で約660mmのスペースが必要になることがわかります。

つまり、今後の衝突安全基準に対応してボンネットを装着したボディとするには、全長を650mm前後伸ばして5400mmくらいにするか、あるいは荷室長を650mm前後減らして2350mmくらいに抑えるか、という二者択一を迫られるのです。

ハイエースの全長を前提とした日本の物流

この選択は、荷物を運搬する必要のあるさまざまな業者にとって、切実な問題です。それは、ハイエースの入庫を前提に、設計されている倉庫や工場も多いからです。

例えば新型ハイエースがボンネットを加えたことで、全長が5400mm前後に伸びると、倉庫のサイズに合わないといった不都合が生じる場合があります。

そこで全長の4695mmを守りながらボンネットを装着すると、荷室長が650mmほど短くなるため、今まで運べた長さが3m近い荷物を収納できなくなります。

以上のように、今のハイエースのボディサイズと荷室長は変更せずに維持する必要があるのです。ちなみに、ライバル車の日産 キャラバンも同様で、標準タイプのロングボディは、全長が4695mmで荷室長は3055mmと、現行ハイエースとほぼ同じサイズとなっています。

日本の物流インフラには、ハイエースのボディサイズと荷室長が大きな影響を与えており、だからこそ、冒頭で述べた通りハイエースを街中で頻繁に見かけるのです。

「コンセプト」が示す4ナンバーサイズ維持のアイデア

これらを踏まえると、トヨタはおそらく衝突安全基準の変更期限ギリギリまで現行ハイエースを造り続けるでしょう。全長が4695mm、荷室長が3000mmのボディは、ハイエースの生命線であるからです。

それでも最終的には、ハイエースはボンネットを備えたボディに変更されます。そこで登場する新型ハイエースは、ジャパンモビリティショー2025に出品されていたハイエースコンセプトに近いボディ形状になります。

ハイエースコンセプトには短いボンネットが装着されています

ハイエースコンセプトには短いボンネットが装着され、前面衝突時には衝撃を吸収しやすいです。車内を見ると、運転席以外はすべて荷室です。

助手席も装着されず、展示車には長い脚立が積まれていました。そして現行ハイエースに比べて床が大幅に低いです。

ハイエースコンセプトは1人乗り仕様

ボンネットを装着したボディで全長を4695mmに抑えると、前述の通り荷室長が650mm前後は短くなって長い荷物を積めません。

そこでハイエースコンセプトは、助手席を取り去った1人乗り仕様を用意して、脚立のような細長い荷物なら3m以上の長さにも対応可能にしました。床も低くスライドドアを使った荷物の出し入れもしやすいです。展示車では左側のピラー(柱)をドアに埋め込み、開口幅がワイドです。

ハイエースコンセプトでは床が低く設定されています

このように荷室長が短くなる欠点を、1人乗りによる荷室面積の拡大、低い床、ピラーをスライドドアに埋め込むワイドな開口部などで補うのがハイエースコンセプトの考え方です。

ハイエースコンセプトの注意点

ただしハイエースコンセプトには、重大な注意点があります。 それは、あの優れた空間効率を実現するには、前輪駆動が必須条件になることです。

なぜなら、現行ハイエースのようなエンジンを縦置きにする後輪駆動では、トランスミッションが室内側へ張り出すため、助手席部分まで広がる平らな床は実現できず、床面もあれほど低くはできないからです。

そして、その前輪駆動には「発進性能」という大きな課題が残ります。

開発者は「ハイエースでは過積載(最大積載量を超える重い荷物を積むこと)は行われている」と述べており、重い荷物を積むと後輪の荷重が極端に増えます。登り坂であれば、さらに後輪荷重が増え、駆動輪である前輪の荷重は一層減ってしまいます。

この状態で、雨天時や積雪時に坂道発進を試みると、前輪が空転して立ち往生する心配があるのです。たくさんの荷物を積むハイエースのユーザーには「前輪駆動では使えない」と考える人も多いでしょう。

そのため、この前輪駆動ベースの標準タイプとは別に、従来の信頼性を重視した後輪駆動のロング版も設定されると考えられるのです。

新型ハイエースの発売時期は2029年頃か? 現行モデルの中古車価格高騰も

最終的にボンネットを備えたボディに変更される新型ハイエースの発売は2029年頃と予想されます。商用車の世界が大きく変わり、それは日本の風景にも影響を与えるでしょう。

それに伴い、ボンネットを装着しない空間効率の優れた現行ハイエースは、中古車価格と売却時の価値が、今以上に高まると予想されます。

新型の動向とあわせて、現行ハイエースの相場にも注目していく必要がありそうです。

【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:佐藤 正巳 画像提供:トヨタ自動車】

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