【10年ひと昔の新車】フルモデルチェンジした日産 シルフィは排気量はダウンしたが、ゆとりと満足感はアップした

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、日産 シルフィだ。

日産 シルフィ(2012年:3代目フルモデルチェンジ)

グローバルカーとして生まれ変わったシルフィは、車内の快適性と質感をアップ。加えて新エンジンや最新のCVTが採用されている。

クロームパーツを使いゴージャス感と力強さを持ち合わせたフロントマスク、LEDを多用したランプなど、クラスを超えたデザイン要素をふんだんに盛り込んだ。

ラティオに続いて登場した新型シルフィ。ついに車名から「ブルーバード」の名が外され、心機一転のフルモデルチェンジとなった。まずパッと見では、ひと足先に出たラティオよりも、ずっと高級感がある。ティアナの雰囲気をキープしたままサイズだけ小さくしたような印象だ。

ただし全幅は1760mmある。このクルマがターゲットとする60歳代のユーザーに、このサイズがどう受け取られるか心配なところ。だが、いまやこのクラスはこれくらいのサイズが世界標準。世界戦略車としての使命を負うシルフィにとっては必要だったといえる。

今回、「60歳代の人が使ったらどう感じるだろうか?」をイメージしながら試乗してみたが、ハンドルの切れ角は十分だし、死角が小さく見晴らしが良いので、取り回しに不自由はないだろう。

新開発のMRA8DE型エンジンはロングストローク化やツインVTCによる吸排気効率の向上などが図られた。

エンジンは新開発された1.8LのMRA8DE型を搭載。トランスミッションはおなじみの副変速機付きエクストロニックCVTを組み合わせた。このエンジンは、ロングストローク化や吸排気両側へのVTC(可変バルブタイミング機構)の採用をはじめ、バルブリフター上面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施し、上方にかけて細くなるビーハイブバルブスプリングを採用して摩擦損失を低減。さらにパワーバルブを採用して高回転域での出力を確保するなどの工夫が凝らされている。

小排気量化されても動力性能に不満はなかった

ストローク感たっぷりの足まわりのおかげで乗り心地は良く、上級モデルのティアナを凌ぐほどといっても言い過ぎではないだろう。

実際に運転してみると、出足が軽やかだ。排気量から想像する以上にトルク感がある。静粛性もかなり高く、もっと排気量の大きなクルマから乗り替えようというユーザーも大きな不満を感じることはないだろう。

ストローク感たっぷりの足まわりのおかげで乗り心地も良好で、上級のティアナをしのぐほど。操縦性は神経質なところがない安定志向。クルマの姿勢が不用意に乱れて同乗者に不快な思いをさせることもなく、いつでもリラックスして乗れそうだ。シルフィがターゲットとする層が好むであろう味つけだ。

インテリアも全体的に上質に仕立てられているし、広々としている。全幅がワイドになったおかげで肩まわりに余裕があり、スエードとファブリックを組み合わせた最上級グレード“G”のシートは見た目や触り心地も上質だ。パッケージングの見直しにより後席ニールームはLクラスセダン並みになり、センタートンネルの張り出しも小さくされた。

さらに、このクラスながら左右独立温度調整機能付きエアコンや後席吹き出し機能を設定している(“S”を除く)。トランクも驚くほど広く、ゴルフバッグは楽々収まるし、トランクスルーも可能だ。

このクラスのセダンは、市場規模は小さいが確実に需要があり、それでいて魅力ある商品が少ない。そんな中に現れた新型シルフィは、視覚的にも、さらには居住性や乗り味の面でも、高い満足感を提供してくれると思わせる仕上がりぶりだった。

視認性に優れたファインビジョンメーターを採用。インパネ下部とフロントドアのトリムには「マイクログレイン」を採用し表面の質感を高めた。

●全長×全幅×全高:4613×1760×1495mm

●ホイールベース:2700mm

●車両重量:1240kg

●エンジン:直4 DOHC

●総排気量:1798cc

●最高出力:96kW(131ps)/6000rpm

●最大トルク:174Nm(17.7kgm)/3600rpm

●トランスミッション:エクストロニックCVT

●駆動方式:横置きFF

●燃料・タンク容量:レギュラー・52L

●JC08モード燃費:15.6km/L

●タイヤサイズ:195/60R16

●当時の車両価格(税込):238万9800円

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